韓国と北朝鮮が4月末に南北首脳会談を開くことで合意したと発表された。これに関して北朝鮮側は「体制の安全が保障されれば核保有の理由は無い」と述べたと言われ、朝鮮半島の非核化、戦争回避への期待が出てきたという見方で評価する向きもある。続いてトランプ大統領が5月までに北朝鮮と会談する方向であるとも報じられた。
しかし、早見はこのニュースを受けて、即座に1938年9月に開かれたミュンヘン会談を思い起こした。当時、軍備拡大と領土拡張に突き進んでいたドイツのヒトラーは、ドイツ系住民の多いチェコスロバキアのズデーテン地方を併合する姿勢を示し、戦争も辞さないという強硬な態度を取った。イギリスやフランスなどはドイツとの戦争になるかもしれないという危機意識と不安感が高まる状況で、ドイツ、イギリス、フランスなどの首脳が出席してミュンヘン会談が行なわれた。
この会談でヒトラーは「領土拡張は今回で最後である」と表明し、イギリスのチェンバレン首相はこれを信じて、チェコスロバキアにズデーテン地方をドイツに譲渡させるという犠牲を強いて戦争回避を選択した。イギリスに帰国したチェンバレン首相はヒトラーの言葉をそのまま信じる形で戦争は避けられたと胸を張って国民に話したが、それは全くのペテンであった。ヒトラーはズデーテン地方を併合した後も、更に領土拡張の進撃を止めず、チェコスロバキア全土を占領して、更にポーランドに侵攻した。裏切られた形でついにイギリスやフランスもドイツとの戦争に踏み切った。これが第二次世界大戦の幕開けになった。
今回、朝鮮半島でのアメリカの大規模な軍事攻撃がいよいよ行なわれるのではないかという様々な具体的な観測が広がる中で緊張感が高まり、3月半ば以降は何が起きてもおかしくはないという見方も出ていた。そうした中で韓国が動き、南北首脳会談実施で緊張を和らげたかに見える。
しかし過去の歴史を振り返れば北朝鮮には何度も裏切られており、結局時間稼ぎにすぎない。その間に北朝鮮はますます攻撃力を高めることになり、かつてのヒトラーに対する対応の失敗と同じ道を歩むことになる可能性が大きい。
東京市場でも防衛関連株が急落するなど当然の反応にはなっているが、結局いずれは朝鮮半島情勢が厳しさを増していくことには変わりないと見ておかなければならない。株価の動きはそうした長い捉え方と短期的な捉え方は異なるものなので、柔軟に対応する必要があるが、過去の歴史に学ぶことは重要だと思う。
※こちらのコラムは会員向けレポートから抜粋したものになります。