先般のパウエル新FRB議長の議会証言でドル円相場がやや円安にブレたところから、あっという間に105円台まで下落する激しい地合いになっています。パウエル議長の証言から、当初年3回と見られていた利上げ回数が4回に増えるのではないか?という思惑や、パウエル議長がFOMC後の議長声明を年4回から毎回にする方針という思惑などで、これまで3・6・9・12月のどこで利上げをするのか?何回か?という見通しが、年8回の会合でいつどこで利上げしてもおかしくない状況になるのか?という懸念など、色々な思惑が降ってわいています。(原則として、金利変更はFOMCの中で議長会見のある回で実施されやすいという前提があります。過去例外あり)
ただ、これらの思惑をブッ飛ばしたリスク警戒のトリガーは、1日のNY時間に発表された「鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の輸入関税を賦課する」という決定でした。アメリカの保護主義色が一段と強まっている印象です。
1月にセーフガードが発動(中国製太陽光パネル、大型洗濯機)された際、追加で鉄鋼とアルミニウムにも関税措置を出すとしていましたので、事前に公表した通りの内容ではあるのですが、地合いが悪い中で重なりましたので、リスクオフが加速しました。
さて、中国は3月5日から全人代がスタートします。今回、国家主席は2期連続を超えてはならないという規定を撤廃しましたので、晴れて習近平政権の無期限が承認されます。個人的には、強い権力を長期間掌握することで、次は外に目を向けるのではないかと思えてなりません。
この中国に対し、アメリカは直近で台湾旅行法というものが成立されるとにわかに報じられています。これは全レベルの米政府職員が台湾への渡航、当局者との面会を許可するもので、同時に台湾当局者の訪米、当局者への面会許可をも認めるというものです。
1979年に米中国交正常化して以来、米首脳は台湾首脳と直接のコンタクトを取っていませんでしたが、2016年12月にトランプ氏は蔡氏と電話会談を行ったことで、中国に揺さぶりをかけていました。
アメリカは中国に対して次々とカードを投げているように見えます。まずは貿易戦争の激化、そして中国側から対抗措置が出てくることも懸念されます。
金融市場の表立ったリスクオフ要因がまた一つ強く浮上してきました。
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