中東問題はアメリカの参戦から急速な停戦合意まで短期間で決着しました。アメリカの参戦を受けた週明けのドル円相場は有事のドル買いでポンと急騰していましたが、停戦でドル売りへ、さら6月24日のパウエル議長の議会証言の内容が報じられ「インフレが低下し労働市場が軟化した場合、利下げ前倒しの可能性も」にドル売りで反応。144円台まで値を消しています。
またいきなり衝突するかもしれない火種は残っているとはいえ、中東問題はひと段落して為替市場の材料として完全に消化しました。今回は見事な有事のスイスフラン買い、ドル買いの動きが出ましたが、関税の影響でますます経済が苦しくなる国も出てくる中、今後も世界各地で地政学的リスクの勃発が見られると思われますから、この有事の際の通貨の動きは良いアノマリーになりました。スイスフラン円は今回史上最高値を更新し、180.89の高値を記録しています。
そして今週はまたトランプ大統領のパウエル議長への怒り心頭が報道の1つになっています。パウエル議長は25日公聴会で利下げを急がない方針を改めて示し、一部の共和党議員から出ていた利下げ要求を突っぱねましたが、これにトランプ氏が強く反応。任期が来年5月までのパウエル議長の後任として3~4名の候補を考えており、早いうちに後継指名をすると報じられ、これも早期利下げ観測に繋がりドル売りの追い風になっています。
これまでアメリカの金融市場の方向性を考える時には、経済情勢、各指標は当然のことながらFRB議長の方向性や各理事、FOMCの投票権を持つ地区連銀総裁の考え方を見極めて、大勢を予測するのが一般的でした。しかし現在はトランプ対FRBのような図式になりつつあり、現状ではトランプ強権的な金融政策の方向性になる可能性が高まっています。とすれば高金利のドル買い路線は難しい。
アメリカドルが基軸通貨なのは依然変わりませんが、こうした信認低下もユーロへのマネーの流れの1つになっていることは確かで、ユーロドルは直近の中東問題の混乱の最中、直近高値を更新し1.1688迄上伸、このレポートを書いている時点で6日続伸です。ユーロ円も同様に169.71迄上昇して昨年の高値175円をうかがう動きになっています。
当レポートは今週木曜日発行の会員向けレポートから抜粋したものになります。
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