イスラエルとイランの戦争に米が実質介入するか、イランが反対攻勢をかけて来るか非常に緊迫した状態で世界がじりじりと様子を見守っている状況です。今回の地政学的リスクの発生時のドルの初動は「有事のドル売り」でしたが、その後は「ドル買い」へ一転。情勢を様子見する中で三角持ち合いの中小動きです。持ち合いも煮詰まりつつある中、大きな動きが出れば上下どちらかに放れてきそうな状況です。この問題については投資家がどうこう考えても分かりませんから、情勢を見ながら身軽に動けるポジションでいるしか出来ません。
考えられる変化の点に着目すると、18日発表になったアメリカの住宅市況に大きな変化が出てきています。5月の住宅着工件数は予想135万件に対し、125.6万件、2020年5月のコロナの頃の経済が一気に停滞した時に並ぶ、5年ぶりの低水準となりました。物価や資材の高騰に加えての住宅ローン金利の上昇、そして経済の先行き不透明感等々、新たな不動産購入を手控えさせ、買い手が不在となっている状況が見えてくる結果になりました。着工件数が大きく下げたことに加え、許可件数も同様に5年ぶりの低水準です。許可件数は住宅をいざ建てる前に建設許可を申請した件数ですから、許可件数が低いということは、当面住宅市況は鈍い状況が続くことになります。
18日のFOMCは事前予想通り金利を4.25-4.50%で4会合連続据え置きを決定しました。またその際パウエル議長は今後数カ月で相当なインフレが到来すると予想し、FOMCメンバーの経済見通しも年内の利下げ回数見通しは2回で据え置きました。また年内の利下げ回数0を見込むメンバーも前回3月の見通しから大幅に増えており、インフレ率見通しは2025年通して3.1と高い為、トランプ大統領からの再三にわたる利下げ要求に対し、FOMCは毅然とした独立性を遵守し経済状況を冷静に判断しているという姿勢を強く見せたという印象です。関税の影響をもとにさらにインフレが強まると見ているしているのですから、利下げは出来ません。
高インフレ継続で物価上昇の中、複数回「景気は底堅い」と発言したパウエル議長ですが、物価高がまだまだ続くとなるとスタグフレーション懸念は払しょくできません。先の住宅市況の停滞が先行指標となるか注意して見ておきます。
当レポートは今週木曜日発行の会員向けレポートから抜粋したものになります。
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