先週末公表された米5月雇用統計は予想をやや上回る好結果でドルは買われ、今週は145円台まで戻しましたが、米中交渉がすっきりと報じられていないことや、米ロサンゼルスで連邦政府による滞在資格のない移民の一斉摘発への抗議デモが一部暴徒化し、そのデモが全米主要都市に拡大していることなどでドル買い威力はやや低下し、現在143円台と小幅で、ドルは日々移ろう動きが続いています。
週明けには日銀の金融政策決定会合を控えており、事前予想では来春以降の国債買い入れを現行契約よりも減額ペースを鈍化させるという見通しがあり、米FOMCについては11日に公表された5月CPIでこれ以上のインフレ加速が落ち付いてきたと見られることから、トランプ大統領はお決まりの「利下げ要求」をSNSで書き込むなど、一連の想像通りの流れが展開されました。ただ、ドル円相場の手掛かり材料とするようなものはさほどありません。
またECBが公表した2024年の調査によると、世界の外貨保有のシェアは依然としてドルがトップで58%を維持するも、過去10年で10%低下、円やカナダドルが伸ばし、ユーロ比率は20%弱の推移で変化が無く、金が20%を超えてユーロ以上の伸びになっているという内容でした。ドルに代わる保有としてユーロを筆頭に他通貨が伸び、また金が過去10年で2倍以上の伸びで大きく躍進していることなどが確認されました。
直近で動きが出ている通貨が資源国通貨でしたが、日本時間で13日午前、イスラエルがイランを攻撃し、懸念されていた地政学的リスクが早期に現実のものとなりました。この数日は中東緊迫化を背景にWTI原油が先週の63ドルに対し近々で69ドルまで急騰するなど原油上昇を背景に資源国通貨が買われていましたが、これは始まるまでの一過性の上昇になることが多く、いざ不安が現実のものとなった今は一気にリスクオフの動きで上昇分は吐き出して売りが加速しています。通貨は全面的にリスクオフの円買い、逃避通貨のスイスフランが高値更新で24年につけた最高値180円を追う動きになっています。また先に触れたECBの調査にもあるように、安全資産の意味で金が買われています。
当レポートは今週木曜日発行の会員向けレポートから抜粋・加筆したものになります。
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