先週末5日に発表された米の5月雇用統計は、事前予想を大きく覆す強いプラスのサプライズとなりました。NFPは事前予想-800万人に対し、+250万人、失業率は予想19.8%に対し、13.3%と好結果となり、ドル円は110円を伺うほどの上昇になりました。しかし、週が明けてドルが値を消し、5月に長らくとどまっていた107円台まで急降下となりました。その背景には、今週10-11日に予定されていたFOMCでの結果に対する警戒があるとされていました。
さて、そのFOMCですが、最大の注文はYCC(イールドカーブコントロール)の導入の可否でした。まだまだ導入は見送られるという公算ではありましたが、FOMCの会合後にパウエル議長が会見でYCCの論議を行ったことを表明。景気が失速した場合に備え引き続き効果に疑問が残るとしながらも、YCCの論議を続けていくと示したことで、米長期金利が低下しドル売りにつながり、ドル円は107円台を割り込み、5月15日以来の106円台となっています。
また政策金利については、現在のゼロ金利を2022年まで続けることを示したことも、為替には重石です。
先日、アメリカの景気循環を判定する超党派の非営利組織である全米経済研究所(NBER)が新型コロナ感染拡大に伴う急激な縮小で、今年2月にリセッション入りしたと判定しました。景気拡大期間は2009年6月から128カ月続き、記録の残る1854年以降で最長となりましたが、通常リセッションの判断の大きな基準の1つとする2四半期連続GDPマイナス成長という結果を待たず、早々に景気判断をしたことも異例です。先般の雇用統計では好結果がサプライズになりましたが、失業率は今の水準で長く高止まりする可能性が高いことをFOMCも示唆しており、急激なショックから自律反発がありましたが、次は実体経済が判断されていく局面でしょうか。
チャート的にも107円より上は月足でも雲が強い抵抗ゾーンになって上値が重くうかがえます。2015年につけた125.85の高値からの右下がりのレジスタンスを引くと、上ヒゲが抜けることはあっても、実体はレジスタンスを全く抜けていません。今回も押し戻されているのでこの面からももうしばらくは上値が重そうかという印象です。今の経済状態では107円前後は心地良い水準ととらえらるかもしれませんね。
その他このところ買われていたクロス円も全般に一服気味ですから、利益確定して次の動きを待ちましょう。
※こちらのコラムは毎週木曜日時点で執筆した会員向けレポートより抜粋しております。
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