トランプ政権が景気てこ入れの一環として1兆ドル(約107兆円)に近いインフラ計画の提案を準備していると報じられたことで、今週はコロナ第2波懸念の下げ相場から一転、株価は急騰する動きになりました。しかし、こうした激しい動きをよそに、ドル円相場は引き続き心地良い水準と思われる107円台で小動きになっています。
1兆ドルのてこ入れ策については非常に好感されているものの、FRB議長を務めたバーナンキ、イエレン両氏を含むエコノミスト130人が連名で声明を発表し、連邦議会に追加の経済政策を決定するよう要求しましたし、パウエルFRB議長も景気に対して尚慎重な姿勢を示しており(当然ですが)、ゼロ金利は当面継続されることも示されました。
さらにアジアを中心に今週は地政学的リスクが浮上しました。16日に朝鮮半島の南北国境で北朝鮮が開城工業団地を爆破し、韓国とのつながりを一方的に経って、暗に欧米への要求を強めるポーズを示しました。これはいつものことですが、いつものことが少し発展しているのが中印国境紛争です。
1962年に国境をめぐって軍事衝突した中国とインドは、長年国境を挟んでにらみ合ってきましたが、6月中旬に両軍が衝突し(発砲は無く投石や殴り合いという解説)、インド側は20名の死者がいることが報じられています。この地で犠牲者が出たのは約40年ぶりですが、ともに核保有国の小競り合いが投石(!)
そして当コラムを書いている18日午前ですが、米中外交トップがハワイで会合を行っています。昨年の米中貿易摩擦の悪化から一時小康状態だったのが、コロナの感染爆発で再び悪化してきています。その渦中で、両国の何かの点での関係改善になるのであれば為替にはプラス材料ですが、最初の発表とそれからの発言がひっくり返されていくのが米中問題ですから、トリガーの1つとして見ておきます。
新型コロナの感染第2波もじわじわと世界に席巻してきました。北京は先日2ヵ月ぶりに二桁の感染者を出したことで、市内全ての学校を閉鎖してオンライン授業に切り替えています。夏から秋にかけては全人代常務委委員会議や、非公式の北戴河会議(今年は開催できるのか?)など中国動向に欠かせない会合が出てきますので、その中で首都のロックダウンは何としても避けたいところ。
アメリカも直近で発表される経済指標も軒並み回復基調になってはいますが、全米に拡大している黒人差別反対デモは欧米にも広がっており、この人の集まりもまた新たなコロナ懸念につながっていきます。さらに全米の都市を見ると経済活動の再開が早かった地域で再び感染者が増えているなど、明るい材料が見当たらない状況です。5月から6月にかけては金融商品全般にリスクオンの流れが強まりましたが、さすがに小休止ですね。
※こちらのコラムは毎週木曜日時点で執筆した会員向けレポートより抜粋しております。
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