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EU復興基金創設は決められるのか2020.07.10

 欧州では、新型コロナウイルスで打撃を受けた国々を支援する目的として、独仏の提案で総額7500億ユーロ(約91兆円)の復興基金の創設を目指しています。この7500億ユーロのうち、5千億ユーロは返済不要な補助金として、残りの2500億ユーロは融資として提供するよう提案しており、この復興基金の創設可否が大きな焦点になっています。これを決定する場合はユーロ加盟国の全会一致が必要であり、オランダをはじめとする北欧諸国は当初から根強く反対の姿勢を示しており、まだまだ妥結となれるかどうかは厳しいところです。

 現在もドイツが主導権をもって話をまとめるべく進めており、その1つのスケジュールとして、7月17-18日のEU臨時首脳会合での決定が期待されています。ただでさえユーロ加盟国は経済の強弱が非常に激しい(貧富の差がある)国々の集合体であり、ショック安的なことに陥ると、国レベルでの決定ができない点がウィークポイントになり売られがちです。しかし復興基金が創設できるようであれば、加盟国が一丸となっている評価を受け、目先のユーロ相場はポジティブに働く可能性が高いと思われます。

 新型コロナウイルスの感染第2波が世界の各地で起こっており、地域的な都市封鎖(ロックダウン)が発生しています。ただし、国単位ではなく「街単位」というレベルでもあり、今春ほどの懸念はまだ高まっていませんが、豪州ではビクトリア州(メルボルン含む)とニューサウスウェールズ州(シドニー含む)の州境が閉鎖され、ビクトリア州は6週間のロックダウンになりました。この2大州の州境が閉鎖されるのは、1919年のスペイン風邪の大流行の時以来100年ぶりの措置になりました。ビクトリア州は、豪で2番目に人口の多い都市ですから、再び経済減速の大きな要因となる可能性が高く、豪経済に赤信号です。

 こうした大規模な地域のロックダウンが発生する危険性は、世界の各地で起こりうるので致し方ありませんが、欧州は感染数も下火になっていることから、依然として感染拡大が続く米のドルと比較しても、復興基金創設が現実的になる報道によって買われやすい地合いになる可能性が高まります。

 ドイツは7月1日から付加価値税(日本でいう消費税)を19%→17%へ、食料品は7%→5%へ半年限定の減税を施行しました。英国も15日から半年限定で特にこのコロナ問題で傷んだレストラン、パブ、ホテル、映画間、テーマパークなどの利用を対象に付加価値税を20%→5%にすることを決定しました。欧州は減税でさらに経済効果の押し上げに進んでいます。すでに観光の往来も再開していますので、経済回復も実体経済の押し上げでユーロに追い風となりそうです。

 ※こちらのコラムは毎週木曜日時点で執筆した会員向けレポートより加筆・修正しております。

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