アメリカのパンデミックに対応した量的緩和策の出口戦略の道筋を示していくことを求めるような発言が増えてきました。テーパリングの示唆期待です。
現在の市場予想によると、2022年1月にテーパリングを開始して2022年中に資産買入を完全に終了させ、2023年12月に利上げ実施となるのではないか?というのが大勢のようです。これは前回のテーパリングから利上げに要した時間を単純に当てはめた見通しになります。前回は、2013年12月18日のFOMCでテーパリング開始が決定し、2014年1月から実施され10月で完全に資産買入が終了しました。そして2015年12月のFOMCで9年半ぶりに25bpの利上げを実施し、利上げトレンドに転換していきました。当時の相場の反応を見ると、テーパリングの決定を受けた13年12月のNYダウは6営業日連続で史上最高値を更新していくなど、強い動きが続いていました。ドル円相場も同様にじわじわと円安が続く場面でした。
一方実際にテーパリングが始まった2014年に入ると年始からやや円高の動きとなり、夏の終わりまで100-105の間の小さな小動きが続く展開となりました。しかし株価は日米とも1-2月と大きく下落し安値を付ける動きになりました。背景には米国のテーパリング開始や新興国不安など1つの悪材料というよりは、米国の金融政策をにらんだ動きで利益確定売りが進んだり、一旦リスクオフになったような場面でした。
テーパリングを受けた金融市場は長期的に見ればその時の下落を吸収するような上昇になっているものの、いざ実施されると目先的には調整懸念が高まりやすくはなります。今回も同じような動きになるとは言い切れませんが、大きな前例としては見逃せません。
またこの時の利上げは2015年12月と量的緩和を終えてから1年以上の月日が空きましたが、当時は利上げに踏み切るのが遅い(遅かった)という意見が大勢でした。市場は2015年6月には利上げ開始と見ていたので、実際に市場予想と期待より半年遅れたというイメージです。つまり今回はもう少し量的緩和終了から利上げ迄のペースが速い可能性もあることも念頭に置いて置きたい点です。
未だ期待は薄いとは思いますが、でもこの6月のFOMC(6/15.16)でテーパリング議論が始められるかどうか。「テーパリング開始の時期を探るべきだ」というようなニュアンスでもマーケットは反応するのではないかと思います。がその前に、6月4日は5月雇用統計です。前日3日に発表された5月ADP民間部門雇用者数は97.8万人増となり、市場予想の65.0万人増を大きく上回りました。またイニシャルクレームも市場予想の39.0万件を下回る38.5万件となり、コロナパンデミック以降で初めて40万件を下回るなど、雇用統計に向けて堅調な数字が出てきましたので、堅調な雇用が確認される結果になれば、テーパリング議論開始を期待する向きが一層強まりそうです。NFP予想は65.0万人、失業率予想は5.9%となっています。
※こちらのコラムは会員向けレポートから抜粋したものになります。
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