日本株市場は菅前首相の退任以降の上昇をすべて吐き出す大きな下落に見舞われていますが、欧米やアジア株も総じて芳しくはありません。その中為替市場ではテーパリングに向かうドルが堅調な動きです。対円でも一時112円まで上昇し、下げは良い押し目の場面になっています。ボラティリティは無いけど安心感はある。ただ、1年で一番荒れる月である10月ですから、安心感だけではいられません。中国恒大問題は他の同国不動産会社にも波及して利払い不履行が出ていますし、中国だけではなくアメリカも債務上限問題が懸念されていました。ひとまずこちらは12月までのつなぎ予算が成立して安心感が出ていますが、年末にまた蒸し返される話題になります。ただ直近での不安材料は来年2月で任期切れとなるパウエルFRB議長の人選についてです。
現議長のパウエル氏は2017年11月2日にトランプ前大統領によって指名され2018年2月から現職ですが、任期切れに伴い再任されるのか、別の人物が指名されるのかが注目されています。
直近のFRBは、ダラス連銀カプラン総裁と、ボストン連銀ローゼングレン総裁が相次いで退任を表明しました。両氏は過去1年間に個人的な投資活動が開示され(FRBの規制内での行動)で、FRBの金融政策運営にかかわる当事者が個人的な投資活動を行っていたことで問題視され、退任への流れになりました。これがパウエル議長再任への大きな向かい風になってきていたところに加えて表面化したのがクラリダ副議長による投資活動です。昨年2月末、当時世界的にコロナ感染が拡大し株価が急波乱になったことは記憶に新しいですね。その波乱の最中であった2月28日にパウエル議長が景気下支えの政策措置の可能性を示す発言を行いましたが、クラリダ副議長はその前日27日に個人的な資金の一部を債券ファンドから株式ファンドにシフトしていました。事前に承認を得ていた投資行動であったとはいえ、タイミング的には最悪です。
こうしたことが立て続けに出ていることでパウエル議長に対する信認低下を示す声が議会から出ており、ブレイナード理事を推す雰囲気が強まってきました。ブレイナード理事はちょっとハト派の印象ですから、万が一パウエル議長退任となると、今既定路線となっているテーパリング開始等に対して揺らぎが生じかねず、ドル一強という流れが崩れる懸念もあります。この人事については続報に気を付けて見ていってください。
※こちらのコラムは会員向けレポートから抜粋したものになります。
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