連日ウクライナ関係に続く報道は出ていますが、幸いなことに衝突などが報じられず、危機後退懸念で市場がリスクオンに切り替わってきています。当事国の通貨の動きを見ると、ロシアルーブルは対ドルで1/26に安値をつけてV字型の切り返しで現在まで大きく値を戻しており、ウクライナフリブニャも1/27に同様に底値をつけて切り返しています。これらマイナー通貨ですから、FXで取引するとしたら、地政学的に隣接するユーロが最大の注目通貨になりますが、このユーロも対ドル、対円で大きく上昇してきました。
ユーロの上昇はウクライナ問題の危機後退も追い風の1つではありますが、大きな要因は欧州のインフレ率も大きく上昇していることから、ECBが早期の利上げを示唆するようなタカ派姿勢を鮮明にしてきたことです。
今月3日に開催されたECB会合とラガルド総裁の会見は、まさに「想定外」のタカ派でしたが、そもそも前日2日に公表された欧州のHICP(消費者物価)が前年比で+5.1%と高水準になり、1997年の統計開始以降最大の上昇となりました。それを受けての会合でしたが、議論の中心になったのが、ECBの公表するインフレ予測について、一部複数の委員が疑念を持ち議題になったことが、早い利上げ示唆の大きな追い風になったという見方もあります。というのも、昨年12月16に公表したECBのインフレ予測によると、2022年の予測は3.2%だったのに対し、すでに1月時点でそれを大きく上回る5.1%となったことで、急速に変化する物価高の中でこれまでと同様のインフレ予測の算出をベースに金融政策を検討していたらECBは経済に対して後手に回るのではないかという懸念が強まったという流れと解説されています。
現実に予測を大きく上回るインフレ率が確認され、また以降も世界的に物価高の流れはとどまりません。加えて最大の貿易相手国である中国当局が景気の底入れに着手をしていますから、景気が上昇し一段とモノの流れも大きくなる中でインフレ対応をしなければ欧州の経済に打撃になるという見方が強まっています。
欧州経済はこの1,2カ月で大きく状況が変化してきました。加えてウクライナで戦争が起こる可能性が後退となれば急速な買い戻しが強まりそうです。ユーロ円の付き合いチャートを見ると、2014年12月の高値149.76から2021年の高値134.12で右下がりの抵抗線が引くと現在133円前後の水準ですから、これをしっかり上回ると長期的に1つ強い変化になりそうです。万が一ウクライナで衝突などがあれば、2008年や2014年の衝突時の動きを見ても、そこは押し目買いのチャンスです。
※こちらのコラムは会員向けレポートから抜粋したものになります。
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