本邦からも同様に高官の発言に変化がありました。氷見野日銀副総裁は「日銀が金融正常化した際の経済への悪影響は比較的少ない。状況をよく見極めて出口のタイミングや進め方を適切に判断する」と述べました。2013年4月に日銀が異次元緩和を始めてから10年強ですが、その間日銀副総裁が出口戦略について発言することはなかったため、今回の発言にはインパクトがありました。
加えて12月7日には植田日銀総裁が発言した「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になると思っている」というワードが円買戻しに火をつけました。円相場はそれまでの147円台から一気に145円を割れ、早朝には一瞬141円台まで進む円高を付けるなど、急速に日銀マイナス金利解除時期予想が前倒され、12月会合で解除するのではないかという思惑をトリガーに円買戻しが進み、そこにオプション等が絡んだ動きが加速させた円高の動きです。
こうして各国が出口戦略に向けて動き出してきており、それに乗じたトレードが増えています。ただ多くの通貨に利下げ期待が強まる中で、織り込み方が極端であるという見方があることは拭えません。先進国通貨が1年間で100pips以上も利下げするでしょうか。過去20年の利下げの流れを見れば現実味があるかもしれませんが、少なくともよく比較される2008年などはリーマンショックからの欧州債務危機という流れがありました。対して今回は行き過ぎたインフレが是正される、経済がリセッションになるという見込みであり、そこまで加速度的に金利を引き下げる要因となるかはいささか疑問です。行き過ぎた見通しに乗るのはくれぐれも気を付けておきたいと思います。
ただ、いずれにしても2024年は円を売っておけばいいという流れは変わりますし、もうその動きが出てきていることを踏まえて長期のポジションについて考えてください。
(円相場を受けて12月8日午前修正済み)
※当コラムは、木曜日発行の会員向けレポートより抜粋しました。
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