このところ150円前後でドル円相場が膠着していたので、正直あまり見ていませんでした。1年で10円も動かずボラティリティの低い時代があったことを思い出すほどでしたが、6日夕方に時事通信が日銀について「3月の金融政策会合で一部の出席者がマイナス金利政策の解除が妥当だと意見表明する見通し」であるという内容を速報してからドル円相場じりじりと崩れだし、7日の東京市場が寄り付くとさらに売りが強まり、148円台半ばまで一気に円高になりました。15日には春闘回答の集計公表が注目されていますが、中川日銀審議委員は「今春の賃金改定は高めの水準で着地する蓋然性が高まっている」とし、18.19日で開催される日銀会合でのマイナス金利解除が一段と現実味を増してきています。金利市場では年内に2回程度の利下げを見込む動きになっており、こうした動きで一段の円高への警戒が怠れません。
とはいえ、パウエルFRB議長は下院証言で「今年のある時点で利下げに転じる」と発言。利下げ時期の見通しがじりじりと後退している印象です。来週の日銀会合での結果及び総裁会見の内容次第ではありますが、日銀がマイナス金利を解除するのを前提に、即時の追加利上げについて含みを持たせなければ、アメリカの利下げ期待が後退していますから、ちょうどいいドル買いの押し目場面になるかもしれませんね。ただ、早期の追加利上げについて示唆する、もしくは一部の出席者がコメントしたようなことがあれば、円買戻しが加速するでしょうからよく内容を注意する必要があります。
目先は、今週末のアメリカの2月雇用統計、並びに来週のCPIの発表を待ちましょう。利下げ期待がさらに後退するのか、また一転して利下げ期待が強まるのか大きな注目ポイントになります。
そして、5日のスーパーチューズデーを通過し「もしトラ」に現実味が出てきました。同じく5日から開催されている中国全人代では、やはり中国の経済停滞感が非常に強いこと、また製造業や一部サービス業への外資参入の自由化をすることで外資撤退の食い止めをしたいという危機感も感じられる内容です。もしトラなら中国経済への更なる警報が鳴り響くことにもつながります。
※当コラムは、木曜日発行の会員向けレポートより一部抜粋しました。
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