円相場が一段の円安に進んでいますが、岸田首相の訪米に続き現在ワシントンでG20の財務省・中央銀行総裁会議が行われているため、植田総裁、財務相はワシントン出張中です。また初の日米韓財務省会合も行われ、円安・ウォン安が進む為替市場についての意見交換が行われたと報じられています。くだけて言えば鈴木財務相がイエレン財務長官に為替介入の了承を得に行った?という感じでしょうか。関係者の帰国は21日とのことなので、今週は介入等の行動は無いと思いますが、来週も日銀会合も控えているので、その前の介入に対しては消極的かもしれません。そもそも、アメリカ側がインフレ抑制に遅れが出ており、一部では追加利上げなんて思惑すら聞こえてきている昨今ですから、介入の効果も疑わしいところです。ウォン安の懸念を示している韓国との協調介入等々、単独ではなく協調介入が出来ればインパクトはあるかもしれませんが、今は介入よりも日銀の政策変更のほうがリアルかもしれません。今週の報道では、米銀各社でドル円相場155円が防衛ラインと揃って見通しを示していました。155円に乗れば皆が政府・日銀を(というか神田財務官)を見て行動しだすということなので、心理的にも非常に重いラインになりますね。
今週はドル円相場が154まで上伸したこともあり為替相場も円相場一色ですが、その他の通貨に目を向けると、アメリカの堅調な小売売上高を受けて米長期金利の上昇につながり、独歩高だったメキシコペソが調整しています。一本調子で上げてきていましたので、ちょうど良い押し目になりそうです。また介入を警戒するとドル円、クロス円等はちょっと触りづらくなりますから、ユーロドルで戻り売りも一考です。ECBは6月に利下げ開始と見込まれていますが、たいしてドルは前述の通り利下げ時期がどんどん遅れていますから、金利差からも早々にパリティに向かいやすくなりそうです。まずは昨年10月につけた1.044あたりが安値の目途になりそうです。
いずれにしても、今はいつ新たな地政学的リスクが発生するか分からない混迷とした情勢であるわけですから、一気に逆に相場が動くことがあってもおかしくはありません。ポジションには必ずロスカットを入れるなど注意を怠らないようにしてください。利下げに転じて売られたスイスフランが逃避通貨として再び上昇に転じていますが、地政学的リスクでスイスフランを買うのも瞬間的にはリスクの程度が大きいか小さいか判断できないので勧めません。小さければあっという間に大きく損が出ます。報道より先にスイスフランが大きく動くことがありますから「何かあった」と判断できるようウオッチだけはしておくことをお勧めします。
追記:4月19日日本時間午前に、イラン、シリア、イラクで同時爆発という報道から一気に地政学的リスクへの懸念が高まり、株売り、円買い、原油買いの流れになりました。日本への報道よりも相場の動きのほうがやはり早く(というか日本の報道が遅すぎるのでしょう)前述の通りスイスフランは逃避通貨として買われましたが、第一報から懸念が薄らぐ中であっという間に値を消しました。何かが起きたときは逃避がまず第一になりますが、その何かがきな臭いものであればスイスフランが一気に急伸します。改めて今のような世界的な混沌試合ではウォッチが欠かせません。
※当コラムは、木曜日発行の会員向けレポートより一部抜粋しました。
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