先週のレポートで欧州議会選挙の結果フランスの政情不安が出てきたと取り上げましたが、今週は週初からそれを要因に金融市場全般が大きく波乱含みになりました。フランスの政情不安をリスク要因としている割には時差があり、ややそれを波乱の「理由付け」とした印象を持ちましたが、6月30日に控える1回目投票、7月7日の決選投票に向けての注目度が俄然増してきました。選挙結果によっては「EU離脱か」といった極論も出始めていますので、フランス同様に極右の躍進で与党の弱体化が目立つドイツをはじめとした他国も動向に目が離せません。
その前に選挙結果が出るのがイギリスです。7月4日に総選挙を控えていますが、EU全体の今後を占うフランスの政情不安に比べると一国の政権交代程度になりますから、注目度は低下しました。また直近で発表された5月のCPIは前年比で予想通りの+2.0%となり、2021年7月以来3年ぶりの水準となりました。利下げ開始見通しはどんどん後ずれしており、現在9月以降という見込みです。
さて、ドル円相場はじりじりと158円まで上昇してきました。160円からの介入で一時150円台前半までドル売りが進みましたが、先般の日銀会合も介入を支援する内容ではなかったので堅調なドル、安定した円安という動きでドル円相場のドル買いが好まれているようなじりじりとした円安です。近々にはドル円相場の直接的な材料も見当たらず、21日線がきれいに上昇トレンドをサポートしていますので、下げたら押し目買い方針です。(レポート発行後の6月20日NY時間にアメリカが半期為替報告書を公表。日本は監視リストに加えられたことが報じられました。日本当局の介入は対象期間外のため監視リストに加えた要因ではないが、介入は適切に行われるべきとの文言が示され、監視リストに入ったことで日銀は介入をしづらくなるのではないかという思惑からドル円はさらに上昇し、一時159円乗せ。)
その他の通貨を見てみると、選挙で大きく値を消した南アフリカランドは、与党がその後の連立協議で白人主体のDAとの挙国一致政府の発足で合意に達したことを市場が好感し、連日高値更新で安値から半月で約8%上昇しました。同様に選挙後に波乱の動きを見せたメキシコペソは、安値からやや出直りの動きも見せましたが、2022年以降の月足で今月最大の大陰線になっており、今回のペソ独歩高相場の終焉を感じさせる動きです。
そして伸びているのが豪ドルです。18日のRBA会合で4.35%の政策金利を据え置きましたが、声明の中で物価高を警戒する旨を示したことから、利上げ期待が再燃しています。すでに2013年の高値105.42を抜いて、11年ぶりの高値更新となっていますが、日足チャートを見ると今回の動きも始まったばかり。次は16年前2007年につけた史上最高値107.79が見えてきます。
※当コラムは、木曜日発行の会員向けレポートより一部抜粋しました。
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