トランプ大統領が次期米大統領に決まったことで、世界はトランプ体制再びの厳戒態勢に入ってきました。何よりも貿易戦争の再燃が最大の懸念と考えられ、中国は一部でドル売り介入をしていると報じられ、欧州は株価軟調に推移し高関税政策への懸念が浮き彫りになった形です。
一方日本は開票時間中にトランプ優勢と報じられると円安・株高が加速し、ドル円相場は一時154円台まで上昇しましたが、官房長官の口先介入が入るなどで高値一服の動きになっています。
まず、2017月1月20日に就任した前回のトランプ政権の頃のドルの動きを振り返ります。2016年11月の大統領選挙の時は、トランプ当選から年末にかけて力強いドル高になりました。ただ、この年は6月に英国のEU離脱が決定したことでリスクオフが強まり、先に円高が加速したので、その巻き戻しの面も強かったという側面があります。そして年が明けて2017年1月の就任以降から2021年1月の退任迄、ドル円相場は110円を挟んだ小動きに終始し、ほぼボラティリティがなく、年足も2017年~2020年まで4年間、すべて陰線でした。その後バイデン政権はコロナ禍のインフレ加速も加わり一気にすさまじいドル高になっていきましたからドルで大きく利益を積み重ねられましたが、その一辺倒な流れへの変化は出てきそうです。
2017年の前回就任当時と今回とでは、インフレの状況が大きく違いますが、保護貿易を加速した場合には更なるインフレが警戒されます。となると、当然今のFRBの利下げの流れに再度利上げという選択肢が生まれる可能性も否定できません。それを前に11月7日のFOMCでは25bpの追加利下げが決定しました。トランプ就任前の12月の会合も、同規模の追加利下げを行う見込みです。
インフレに悩む日本側としても一時154円台まで上昇したドル円相場に対して官房長官が口先介入をし、日銀も前回の会合で金融政策変更に対して前向きなスタンスを示していますから、12月に向けて警戒感が強まりそうです。
これから就任日に向けてトランプ次期大統領による経済政策、保護貿易政策、移民問題等多くの発言が飛び出してくるかと思います。グローバルからナショナリズムへの流れが加速し、その1つ1つの日本を含め世界が恐々とする時代再びです。
※当コラムは、木曜日発行の会員向けレポートより一部抜粋しました。
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