トランプ新政権の公共投資期待と中国国内での投機筋主導のコモディティ価格の急騰も相まって、鉄鉱石や銅などの一部資源の価格が急騰しています。ゴールドマンサックスは10年1兆ドルの公共投資が実現した場合、アメリカの鉄鉱石需要は年6%上昇、銅は年4%上昇としていますが、それらを背景にかなりハイピッチな市況環境になっています。
資源価格上昇を受けて豪ドルは対円では堅調な動きで今年4月末以来の82円台まで上昇しましたが、対ドルでは大統領選挙後3・5%ほどドル高・豪ドル売りが進んでおり、対円での上昇もこの対ドルでの売りが足を引っ張る動きになっています。また17日に発表された豪の雇用統計は、就業者数の伸びが見られず、前月分も大幅下方修正されるなど、景気が徐々に回復していても雇用には届いていない現状が浮き彫りになっており、これ以上の豪ドル高を望むには少し厳しそうな環境です。ちょうど週足の一目均衡表で来週の雲の上限が83円12銭ですから、今より上値が伸びたところで、この水準で止められてしまいそうで、これ以上に買い上がっていく材料がありません。
価格急騰している鉄鉱石ですが、その輸出国である豪では今年「サイクロンの当たり年」になる可能性が高いと言われており、実際にサイクロンが重なるようであれば鉄鉱石の供給減に繋がり、価格は高止まりしやすいという見通しが出ています。資源価格上昇という点からは豪ドルには追い風になりそうですが、天候ばかりは神のみぞ知るですので、引き続き様子を見守っていくしかありません。
ここから一番の問題は中国経済の動向ですが、現在元安がかなり進行しており、トランプ新政権と中国の関係性には今現在かなり強い懸念が出ています。輸出の関税問題で衝突していくようになると、中国経済不安がイコール豪経済不安に直結しますので、この点を踏まえると豪ドル長期投資には二の足を踏みやすい環境です。
※こちらのコラムは毎週水曜日時点で執筆した会員向けレポートより抜粋・追記しております。