イアン・ブレマー氏率いるユーラシアグループが年始に公表する「2017年世界10大リスク」の10番目に「南アフリカ ズマ大統領を巡る政治危機」というものがありましたが、その南アフリカの迷走ぶりは色濃くなるばかりです。
ズマ大統領は3月30日に市場信認の厚かったゴーダン財務相を解任し、南アフリカランドは大きく売り込まれました。フィッチは4月7日、同国の格付けをジャンク級まで引き下げ、3月中旬に対円で8・97円まであった南アフリカランドは、4月初旬に7・88円まで短期間で12%の値下がりになりました。
その後ランドの動きは落ち着きを取り戻している面もありましたが、直近では「南ア政府は、国内すべての鉱山はその30%以上を黒人が保有しなければならないという規制を導入した」と報じられ、鉱山株や南ア株価指数が全面安になりました。これでは、世界の投資家は南アに怖くてお金など振り向けられるはずがありません。
同国は経済減速が続き、政治迷走が不安感をより強める中なのに、南アの反汚職当局の護民官が南ア中銀(SARB)の使命を通貨及び物価の安定から経済成長に変更する提言を発し、南アランドは再び大幅に売られました。中銀側はこの発言を打ち消し、独立性を主張する声明を発するも、中銀を巡って政治攻防が続いている様相に変わりません。
このままSARBの独立性を妨げられるようであれば、市場不信任は一段と増していき、更なる格下げ、株売り、ランド売りに襲われそうです。
※こちらのコラムは毎週水曜日時点で執筆した会員向けレポートより抜粋・追記しております。