波乱はドルの買い場に2021.10.01

 「債務不履行(デフォルト)」懸念…というと、今市場参加者にとって最もタイムリーに頭に浮かぶのは、中国恒大集団の利払いについての懸念です。目先は年末まででも何度かの利払い日が集中します。10月12日に1億4813万ドル、10月19日に1億2180万元、10月30日に1425万ドル、11月8日に8249万ドル、12月28日に1億5520万ドルです。直近では9月23日の利払い8353万ドルが不履行になるのではないかという懸念でリスクオフになりましたが、これは30日の延長を行使していますが、その間に次々と利払いスケジュールが入ってくるわけですから綱渡りですね。

 結局中国企業ですから当局も広がる悪影響を加味すると見過ごせないであろうことから、すぐに破綻という警戒は薄らいできました。ただ、長期的なマイナス要因という意味でウォッチは怠れません。

 さて、もう一つ「債務不履行」で特に為替市場に影響を受けるのが米債務上限問題です。債務上限とは、米連邦政府が国債発行などで借金できる債務残高の枠のことで、債務が法定上限に達すると、政府は議会の承認を得て上限を引き上げる必要がありますが、引き上げられないと国債の新規発行ができなくなり、債務不履行(デフォルト)に陥ります。近年は定期的にこの債務上限の引き上げが政治問題となり、公的機関の閉鎖が実施されるようなことも有りました。この問題が今、10月18日を期限に高まることが警戒されてきました。

 9月28日、イエレン財務長官は「議会が10月18日までに上限を引き上げるか、適用を凍結しなければ臨時措置を使い果たす可能性が高い」と表明し米市場の不安感による下げの大きな要因になっています。まずは与野党による上下両院でのつなぎ予算案の可決などが急務ですが、野党共和党が応じる可能性が低い点や、バイデン政権の支持率の低下もあって与党内の方針もまとまっていないようなバラバラな状況が伺えます。直近ではこの問題が頻繁に市場に席巻しますので要注意を。記憶に新しいところだと、トランプ政権の2018年12月末から翌19年1月にかけて政府機関が閉鎖し、経済指標の発表も軒並み遅れました。ちょうどこの期間にフラッシュクラッシュでドル円が三が日に104円迄瞬間安値を付けるたことも有りましたのでご記憶も新しいかと思います。

 一方でFRBはテーパリングの開始を改めて示したことも有り、ドル円相場は大きく上昇。2012年2月以来の112円台を示現しました。秋波乱の今の時期に出てくる急なリスクオフの流れは、今はドル円相場の良い買い場になりそうです。

  ※こちらのコラムは会員向けレポートから抜粋したものになります。

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