かつての円安相場において、キャリー取引の主役は日本円、スイスフランでした。それが今月7月5日にECBが政策金利を0・25%引き下げ、預金金利を0%まで引き下げたことで、金利差に着目した投資マネーの動きが変わってきました。これまでユーロが売られていたのは欧州債務危機での不安感からマネーが逃げるという構図でしたが、これが今度は低金利通貨を売って高金利通貨を買うキャリー取引に趣を変え、ユーロの重石になっています。5日にドラギ総裁は「今後預金金利をマイナスまで引き下げる可能性がある」ことも言及していました。これを受けて外資系投資銀行数社は、ユーロでのMMFの取引及び販売を停止し、これからこの側面からのユーロ買いも期待しづらい状況です。
先般もムーディーズがイタリアの13銀行の格下げを行い、スペインはVAT(付加価値税)を18%から21%に引き上げることを決定し、国民からは厳しい緊縮財政への反発も高まってきました。欧州全体の不安感はまだまだ解消される見込みがなく、金利面からも投資妙味が薄れた今、ユーロ安がまだまだ長く続きそうだというコンセンサスが高まるばかりです。
※こちらのコラムは毎週水曜発行の会員向けレポートから抜粋したものになります。